2014年12月28日日曜日

ソシャゲのインフレ問題


突如発表された『拡散性ミリオンアーサー』 サービス終了の真相を訊く [ファミ通app]


岩野弘明氏(以下、岩野)

いまだからお伝えすると、
もともと『拡散性』を配信する前後で、
とあるどうしようもない事情からコアスタッフが抜けたんです。
その状態で運営を続けていき、ありがたいことにヒットはしていたのですが、
それ以降に新しい展開や盛り上げ施策を行おうとしても、うまく運営ができずにいました。

――そんなことがあったのですか。

岩野
コアスタッフが抜けてしまったがゆえに、
核となるプログラム部分がブラックボックスのようなものになってしまい、
それを手探り状態で更新していたんです。
それをなんとか打破しようと考え、運営1年後のタイミングでいまの運営会社に移管をしました。
そのタイミングでプログラムを1から作り直そうという話もあったんですが、
通常の運営をしながら並行して新規でプログラムを作るのは思った以上の難易度で、
想定していた作りにはなりませんでした。

結果、運営のしやすさはさほど変わらない状態で、
新しい仕組みを取り入れることも難しくなっていました。
そのような大きな壁にぶつかったことが、ひとつの要因です。



このインタビューは面白い。
拡散性ミリオンアーサーのプロデューサーは
わりとぶっちゃけトークするので
はたからみてるだけだと好感もてる。


しかし結論から言うと
拡散性ミリオンアーサーの失墜は、
インフレコントロールのための仕組みが薄く、
ゲームがシンプル過ぎて仕様追加しづらいのに、
KPIにあわせた課金イベントをしすぎたせいだと思われる。



コアスタッフが抜けたのが原因?


「コアスタッフが抜けてしまったがゆえに」
というのはあくまで方便だろう。
初めの3ヶ月ほどやってみたが
デッキ組んだらタップして前に進むだけのオートバトルなので
半裸の女の子捕まえる以外にやれることはほとんどない
かなりシンプルなゲームだ。


裏でどんな複雑な計算をしていたとしても、
まさかプログラムが仕様書とは言わないだろうから
このシンプルなゲームが他のソシャゲよりも修正が難しく、
作りなおすのが難しいということはないだろう。


ただ、あれだけシンプルなミリオンアーサーを
拡張しようとした場合は土台レベルから整合性とるのは難しく、
それゆえイベント運営にも歪んで問題がでてきたのだと思う。


運営の失敗


ミリオンアーサーの運営失敗というとこの記事でまとめられていて

メディア・業界の方へ『拡散性ミリオンアーサー』の不誠実な運営に私は怒っています。


お得なイベントで大量に課金させておいて、
やっぱりお得すぎたから、ポイント減らしますとか
他の項目をデフレさせますとか、
これまでのSR課金の価値が下がりますとか、
KPI最優先の運営になっていて、
課金したユーザーの配慮より
コンテンツの延命を優先してる事がわかる。
せっかくイベントに最適化した課金ユーザーへの
容赦無い裏切りが多すぎるようだ。

これはそもそもインフレコントロールができてないし、
イベントの影響を細部までテストしてないのがまずい。
拡散性ミリオンアーサーはそう大盤振る舞いするほど
1年中新しいカードが出るとか、
毎日シナリオが送られてくるような
大量消費できるコンテンツはもっていない。


コンテンツ消費が早過ぎる問題


ネットゲームには強さのインフレに対するコンテンツを作るより、
ユーザーが消費するほうが圧倒的に早いという問題がある。

コンテンツインフレ問題を
ドラゴンボールやイナズマイレブンで言うと、
日本一、世界一、宇宙一、魔界一、天界一、
あの世一、時空を超えて過去一、未来一。
という風に、強さのインフレは次元を超えてまで急激に追い求めないと
すぐにコンテンツが飽きられてしまう。
インフレバトル物の場合
過去、未来まであさったら作品の終わりが近いと考えていいだろう。

それをなんとか今ある素材で抑えるため、
インフレさせないよう長く遊んでもらうためポイントを出し渋るのと、
面白くしたり、課金させるためにポイントを放出するのとを
パチンコの出玉のようにコントロールする必要がある。

土台となる基本ルールは後から変えられない


拡散性ミリオンアーサーを長期運営するには、
このインフレの仕様をどうにかする必要があった。
しかし元々タップして前に進み、
デッキがレベル上げて物理で殴るオートバトルが初期仕様なものだから
この初期仕様にさまざまな組み合わせや、
コレクション要素や、アクション性などを無理なく組み合わせるのはかなり難しい。
それを入れるとシンプルな拡散性ミリオンアーサーではなく、
土台からまったく別のゲームになって、
これまでプレイヤーがやってきたことが無意味になりかねないからだ。


最初にコアスタッフが抜けたことを
最後まで引きずったような遠因にしているが、
新しい運営スタッフが作りなおしても想定通りいかないのは
初期のゲーム仕様がまずインフレに対応できてないのが問題だ。
毎回見たことある同じ敵を延々とタップするだけでは
ゲームが作業に成り下がってしまう。

ソシャゲは焼畑農業


で、課金ユーザーがいくらか離れたところに、11月、
乖離性ミリオンアーサーという新作が出たのがトドメとなったのだろう。

――実際、『拡散性』のユーザーが『乖離性』に流れることはありましたか?

岩野
かなり多いように思います。数字だけ見ていると当初想定していた以上でした。

安藤武博氏(以下、安藤) ただ、ひとつお伝えしておきたいのが、
本来『乖離性』が出たからと言って、
スマートフォン版の『拡散性』を終わらせる予定はまったくなく、
このような形、タイミングで終わるということは想定していませんでした。
完全に誤算です。

言い訳がましくなってしまいますが、想定していたのなら、
拡散性をベースにしたドラマの『実在性ミリオンアーサー』を仕掛けることもないですから。

――直近では10月の3DS版や11月のAmazon版などの展開もありましたよね。

安藤
我々としては、スマートフォンゲーム業界で誰もが成し遂げていない
“シリーズタイトルの1と2を平行運用する”ことを目指していました。
例えば、『リネージュ』や『ディアブロ』、
『ファイナルファンタジーXI』と『ファイナルファンタジーXIV』のような形で、
両作を続けて行きたかった。

――先ほどの岩野さんのお話にあったように、『乖離性』が配信されることで、
『拡散性』ユーザーが『乖離性』に流れることは想定されていましたか?

安藤
もちろん『乖離性』が出ることで、
『拡散性』のお客様が徐々に『乖離性』へ移行していき、
将来的に『拡散性』が発展的なクローズをしていく……という流れは想定していました。
ですが、今回のタイミングでのサービス終了は私の力不足による自爆みたいなもので、
“両方やりたかった”というのが前提にあったことは事実です。


それでも拡散性ミリオンアーサーは大健闘したほうで、
開始して3ヶ月や半年でたたむようなソシャゲが多いのも
こういうインフレのコントロールができず、
課金ユーザーからすぐに飽きられてしまうところに多くの問題がある。

中には、すぐたたむつもりで課金イベントで
一気に面白いところを消費させて次へ行こうという
焼畑農業的な運営もいたりするが
課金ユーザーもクソゲー掴まされるのに慣れてしまって
焼畑すら上手くいかなくなってるのかもしれない。


課金上位のゲームは長く楽しませるためにどうしてるか?


パズドラ、
モンスターストライク、
ラブライブなどは
対戦による消費、
合成の属性わけを複数段階、
カードコレクションのためのレアイベント、
多方向、多段階の実績コレクションとボーナス。
など、初期仕様から1方向にインフレさせすぎない仕組みがいくつも整えられ
当然ロード時間やUI、ボタンアクションひとつ取っても丁寧に作られてるが

なによりも
ゆるいアクション性から厳しめのパーフェクトスコア達成
という、「反射神経が加わったソシャゲ」になっていて
「ゲームのステータスアップ以上に自分の上達が楽しい」
という根本的な仕組みがある。

これは、ガラケー時代で5ボタンをポチポチ押すだけでは
「反射神経の上達が楽しい」という達成を得にくく
スマホでアクションゲームは元々難しいのだが、
3マッチパズル、おはじき、音ゲーの上記3タイトルが、
画面いっぱい使ったゆるい反射神経ソーシャルゲームとして
一番うまく成立した例かと思う。

アクション性だけだと難しいステージが超えられなくて飽きてしまい
ソシャゲだけだと、コンテンツ消費に追いつかないところ、
この2つを混ぜたうまいバランスが一番長くハマる。

モンハンもゆるいアクション性からはじまり、
ネットRPGなみのコンテンツを
最初から揃えるという点は似てるかもしれない。

でもスマホでアクション性というのはかなり難しいところなので
ここを開拓したり、割って入るのは結構発想の転換が必要だろう。

そこで、クラッシュ・オブ・クランは
「非同期対戦」
というまた別の消費軸を持ち込んだのが面白い。
これは確かに長く楽しんで消費できる。
画面の操作が限られてるなか
こういう発明で開拓していくのがスマホゲームのよいところだ。


ではまだこれからである3DS版やVita版の拡散性ミリオンアーサーもダメか?


といえばそうでもなく

スマホでの反省を活かして、LVやステータスひとつひとつを大事に扱い、
それこそMMORPGの長期運営のように、
コンテンツ追加に合わせたインフレ消費のコントロールができればいい。

LVひとつ、ステータス一つ、MPひとつで達成感を味わわせるという意味では
「ドラゴンクエスト」という最大のお手本が当のスクエニにあるはずなのだが、
ここを大事にコントロールして、たまに会心の一撃やはぐれメタル出して、
プレイするたびに達成感がでるような実績やコレクションになっていれば
長期の運営は可能なはず。

大人課金をしたいというユーザーを捕まえて
スマホレベルで大儲けしようというなら
課金イベントで同じ轍を踏む可能性も高いが、
3DSやVitaユーザーならもう少し長い目で見た運営を期待できるかもしれない。


まとめ


結論は先に書いたが、
コンテンツのインフレ消費をどうコントロールするか?
というのは、一番最初に考えて仕込まないと
後からどうこう仕様を追加しようとしても、
土台から別ゲームにでもしない限り、
なかなかどうにもならない部分なんだというのを
最後のポチポチゲーかもしれない拡散性ミリオンアーサーは
教訓として教えてくれたのだろう。


ソシャゲを運営するというは、
KPIがベースではなく
プレイヤーによる「毎日の達成感」がベースであって
それを最初に本気で考え抜いたのがパズドラなのかもしれない。


追記

――ちなみに、サービスの終了自体はいつ頃を予定されているのでしょうか?

岩野
2015年3月末です。それに向けて2014年12月27日(土)からサービスの一時停止と、
メンテナンスを行います。その後、2015年1月19日(月)にサービスを再開します。
具体的にどうというのは決まっていないのですが、
お金を使わなくてもいままでの”拡散性ワールド”を
楽しんでもらえるイベントを投入する予定です。
また、2015年1月30日(金)にミリコインの販売も終了します。
そこから2ヶ月間は手放しで遊べるようになっていき、
ベストなフィナーレを作り上げていこうと考えています。


実はここも気になるところ。
旧FF14のグランドフィナーレが、
かなりはっちゃけた盛り上がりイベントになったそうなので
スクエニの維持と、信用を取り戻す意味で何をするか
さすがにFF14ほどのことはできないとしても
再びダウンロードしてみようかと思う。



実写演劇の実在性ミリオンアーサーが面白いので2期もお願いします。

0 件のコメント:

コメントを投稿